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イット・フォローズ

2014

イット・フォローズ

It Follows

2014·映画·100·6.8

あらすじ

セックスで「何か」に追われる呪いに感染した少女ジェイの恐怖を描いたインディーズ産モダンホラーの傑作。A24配給。

レビュー

「何かが君を追いかけてくる。顔も声も変えながら、でも必ずそこにいる。そして決して止まらない」——「イット・フォローズ」(It Follows、2014年)が提示するこのホラーの前提は、シンプルで古典的でありながら、見た後に忘れることができない。デヴィッド・ロバート・ミッチェルが監督したこの作品は、ホラーというジャンルの枠組みを使いながら、性と死と青年期という普遍的なテーマを静かに抉る。 主人公のジェイ(マイカ・モンロー)は、デートの後に性行為を経た翌朝、「何かに追われている」ことを告げられる。その「何か」は人間の姿を模して、ゆっくりと、でも絶え間なく近づいてくる。逃げることはできるが、追跡は止まらない。この「呪いの伝播」という設定は、性感染という現実の恐怖のメタファーとして機能すると同時に、より広い意味での「避けられない何か」——死、青年期の終わり、過去の選択の結果——の比喩として読める。 映像スタイルが傑作だ。1980年代のホラー映画への敬意を感じさせるシネマスコープのフレーム、ジョン・カーペンターを彷彿とさせるシンセサイザー音楽、そして「何かが近づいてくる」という状況を最大限に活かしたロングショットの多用。「追いかけてくる存在」が遠方にひとつの点として映り込む演出は、それが何であるかわからない段階から、観客に「知覚の不安」を植え付ける。 ミッチェルは時代設定を意図的に曖昧にしている。スマートフォンが登場する一方、ブラウン管テレビが使われ、車は古い型だ。この時代の混合は「この物語がいつの話か」というリアリティの錨を外すことで、ホラーを特定の時代のものではなく、「常に起きうること」として位置づける効果を持つ。 主人公たちの関係性も丁寧だ。ジェイとその友人たちは、典型的なホラー映画の「ステレオタイプ」に収まらず、不安と友情が混在する等身大の若者として描かれる。恐怖に対して「一緒に立ち向かう」という選択が持つ感情的な重さは、スラッシャー映画には出せない種類の温かさだ。 こういう人に見てほしい。ジャンプスケアではなく、じわじわとした恐怖の積み重ねが好きな人。ホラーに「意味」を求める人、映画の言語(カメラワーク、音楽、編集)に敏感な人。ホラー映画のファンが近年の傑作を探しているなら、本作は必見だ。 類似作品:A24配給の「へレディタリー」「ウィッチ」「ミッドサマー」などのアートハウスホラーと同系統。ジョン・カーペンターの「ハロウィン」「ザ・フォッグ」へのオマージュも感じられる。 イット・フォローズが提示する「呪い」の設定は、性的接触によって伝達されるという設定から性的なアレゴリー(性感染症・同意・性暴力)として読まれることが多い。しかし監督のデヴィッド・ロバート・ミッチェルは特定の解釈を意図していないと語っており、「避けられない何か」の恐怖という抽象的な状態として機能させている。 ジョン・カーペンターへの明確なオマージュ——シンセサイザー音楽、フルショットの活用、郊外の空気感——は、1970〜80年代ホラーへの愛情として機能しながら、映像の洗練度において現代的な進化を示している。ゴア描写ではなく「何かが近づいてくる感覚」という心理的な恐怖に特化した演出は、ホラー映画における恐怖の根源を問い直す。 すれ違う人の誰かがそれかもしれないという「信頼の解体」は、日常の安全という幻想を剥ぎ取るという点で、コロナ以降の世界では追加的な意味を持つ。A24ホラーの流れの中で本作は「不安の詩学」として独自の場所を占めている。 【外部評価】IMDb: 6.8/10 | Rotten Tomatoes: 95%

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