ファーゴ

ファーゴ

Fargo

2014·ドラマ·シーズン5·8.9

あらすじ

コーエン兄弟の映画「ファーゴ」の世界観を引き継ぐアンソロジードラマ。毎シーズン異なるキャラクターと時代を舞台に、ミネソタの平原を背景にした奇妙な犯罪と、善良な人々が悪に巻き込まれていくブラックコメディを描く。マーティン・フリーマン、ビリー・ボブ・ソーントンら豪華キャストで展開。

レビュー

「ファーゴ」テレビシリーズは、映画の続編でも単純なリメイクでもなく、コーエン兄弟の映画が持つ独特の「世界観の継承」に成功した奇跡的なアンソロジードラマだ。ミネソタ訛りの平凡な人々、雪に覆われた平原、そして「なぜ悪いことをしてしまうのか」という根源的な問いを受け継ぎながら、毎シーズン完全に新しい物語を提示する。 シーズン1はコーエン兄弟の原作映画への深い敬意と独自の発展が見事に両立している。マーティン・フリーマンが演じる保険外交員レスター・ナイガードは、「SHERLOCK」でのワトソンとは全く異なる暗さを見せる。平凡な男が些細な出来事から取り返しのつかない犯罪に転落していく過程を、恐怖とコメディの絶妙なバランスで描く。ビリー・ボブ・ソーントン演じる謎の殺し屋ロルニー・マルボは、映画版のジョエルとイーサン・コーエン兄弟が発明したアントン・シガーに匹敵する「純粋な悪の具現化」として恐怖を放つ。 各シーズンが「ある時代のアメリカ」を切り取るというコンセプトも秀逸だ。シーズン1が現代の平凡な悪を描くなら、シーズン2は1979年のギャング戦争の時代を、シーズン3は保険業界の腐敗を、シーズン4は1950年代の移民コミュニティの暴力を切り取る。それぞれが異なる時代衣装をまといながら、「悪はどこから来るか」「普通の人はどこまで悪に染まるか」という同じ問いを問い続ける。 コーエン兄弟の原作映画が持つ「善の象徴としての妊婦保安官マージ」という構造を継承し、各シーズンに「善良さの象徴」となるキャラクターが登場する。この善悪の対峙が説教くさくならないのは、善良さが「強さ」として描かれているからだ。善人は理想主義的な夢想家ではなく、現実を直視しながらも倫理的選択をし続ける強靱な精神の持ち主として描かれる。 キャスティングの豪華さも本作の特筆事項だ。各シーズンに一流俳優が集まり、ワンシーズンの「映画的」な体験を作り上げる。ビリー・ボブ・ソーントン(S1)、キルステン・ダンスト(S2)、ユワン・マクレガー(S3の2役)、クリス・ロック(S4)——それぞれが全く異なる世界観と時代感の中で輝く。 視覚的な美しさも見逃せない。ミネソタの雪原、1950年代のドライブインレストランの原色——「美しいが不穏」という感覚を生み出す美術と撮影は、コーエン兄弟的な美学を完璧に受け継いでいる。 類似作品との比較:コーエン兄弟の映画「ノーカントリー」「バーン・アフター・リーディング」のファンには必視の作品。「アメリカン・クライム・ストーリー」と同様の実力派俳優陣が集うアンソロジーフォーマットとして比較されることもある。 ファーゴはコーエン兄弟の映画(1996年)を「インスパイアされた新しい物語」として展開するアンソロジーシリーズで、各シーズンが独立した犯罪劇として完結している。コーエン兄弟の映画が持つ「中西部の田舎を舞台にした暴力と皮肉の融合」という文法を、テレビドラマとして拡大した野心的な試みだ。 シーズン1でビリー・ボブ・ソーントンが演じるローンは、道徳的な指針を持たない「ランダムな暴力」の体現者として、主人公の普通の男性レスターに「悪の選択肢」を提示する存在だ。この「平凡な男が誘惑される」という構造はコーエン兄弟の「ブラッド・シンプル」や「バートン・フィンク」の系譜にある。 キャラクターが持つ道徳的な複雑さと、それを描くシニカルなユーモアの共存がファーゴの独特の雰囲気を作り出している。どんな残酷な場面でも笑いの要素が同居しており、その不思議な「軽さ」が後を引く魅力になっている。各シーズンが独立しているため、どのシーズンから見始めても良い点もシリーズの強みだ。 【外部評価】IMDb: 8.9/10

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