ベター・コール・ソウル

ベター・コール・ソウル

Better Call Saul

2015·ドラマ·シーズン6·50·9.0

あらすじ

「ブレイキング・バッド」のスピンオフ。詐欺師出身の弁護士ジミー・マクギル(ボブ・オデンカーク)が、やがて犯罪者専門弁護士「ソウル・グッドマン」へと変貌していく過程を描く。原作との時間軸が絡み合う複雑な構成で、全6シーズン63話。

レビュー

ベター・コール・ソウルは「ブレイキング・バッド」のスピンオフとして制作されたが、シリーズとして独立した傑作として評価されている。詐欺師あがりの弁護士ジミー・マクギルが「ソウル・グッドマン」という別人格へと変貌する過程を、ブレイキング・バッドより前の時系列で描く。6シーズン・63話にわたるこの変貌の記録はブレイキング・バッドを越えるという評価もある。 ジミー(ボブ・オデンカーク)の核心的な悲劇は「良くなろうとするたびに良い方向へ進めない」という構造だ。彼は兄チャックに「本物の弁護士」として認められたいと思い続けるがチャックはジミーを詐欺師として根本から信用しない。この兄弟関係がシリーズ全体の感情的エンジンとして機能する。チャック・マクギル(マイケル・マッキーン)は単純な「邪魔者」ではなく法律の純粋性への信念と弟への複雑な愛情の間で葛藤する人物として描かれる。 キム・ウェクスラー(ライア・シーホーン)というキャラクターはブレイキング・バッドには存在しない人物だ。ジミーの恋人であり道徳的な対抗軸として機能する彼女がなぜブレイキング・バッドに登場しないのかという問いがシリーズの緊張感を維持する。キムとジミーの共犯関係が深まるにつれ視聴者はキムの結末を心配しながら見続けることになる。 ヘクター・サラマンカ、グス・フリング、マイクといったブレイキング・バッドのキャラクターが「起源」として描かれており、両シリーズを知る視聴者は「この後に何が起きるか」を知りながら見るという重層的な体験を持つ。この「知識のサスペンス」は通常のサスペンスとは逆方向の緊張であり、主人公の転落を分かっていながら見続けるという独特の快楽を生む。「転落が分かっていても、それがいつどのように起きるかは分からない」という構造が視聴者を引き留め続ける。 白黒映像で描かれる現代のジミーのシークエンスは変貌の完成と喪失の重みを映像の質感として表現する。最終シーズンでジミーが過去の全ての選択と向き合う法廷場面は、ブレイキング・バッドとの連続性を感情的に完結させながら独立した物語としても機能する傑作エンディングとして評価されている。 ジミーがソウルへと変貌する過程の最大の悲劇は「変わりたい自分」と「変われない自分」の間の永続的な葛藤だ。彼は幾度も「真っ当な弁護士」になろうとし、幾度もその試みを自ら壊す。これは「悪人が良くなれない」という単純な話ではなく「自己認識のズレが行動を歪め続ける」という心理的な循環として設計されている。チャックに「本物の弁護士にはなれない」と信じさせられたジミーが、その信念を自己実現し続けるという構造が、このシリーズの核心的な悲劇だ。 「ブレイキング・バッド」との比較で語られることの多いシリーズだが、本質的な違いがある。ウォルター・ホワイトは「変貌する」物語だが、ジミー・マクギルは「元からあったものが顕在化する」物語だ。「ソウル・グッドマン」はジミーが新しく作った人格ではなく、ずっとそこにあった可能性の一つが実現した結果として描かれている。「人間は変わるのか、元からそうだったのか」という問いへの、ブレイキング・バッドとは対照的な答えがここにある。 「ソウル・グッドマン」という名前はジミー・マクギルが選んだ偽名でありキャラクターの「仮面」だ。しかし「ソウル」という名前が「Soul(魂)」に聞こえることは意図的であり、キャラクターが魂を売った者として機能する設計になっている。「Good man(良い人間)」という名字との組み合わせは「魂を持つ良い人間」という皮肉な意味を持ち、ジミーが最終的に失ったものが何かを名前そのものが示している。このような言葉遊びが物語の深い層に機能するため、シリーズは再視聴によって新たな発見がある設計だ。 【外部評価】IMDb: 9.0/10

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